Japanese Red Cross Medical Center Emergency and Critical Care Medicine Center

スーパー母体救命

スーパー母体救命とは

東京都では2009年から「東京都母体救命搬送システム(スーパー母体搬送)」が運用され、救命を要する妊産褥婦を“必ず受け入れる”ことで、迅速な診療を実現しています。

当院は、その最終受入れ施設としてシステム開始当初(2009年)から、救命救急センターと周産期センターが連携しながら「母体救命対応 総合周産期母子医療センター(スーパー総合周産期センター)」として重症母体に対応しています。
これらの「母体救命搬送システム対象症例(スーパー母体救命)」は院内の様々な診療科や部門が連携して対応することを要し、その中心的役割を担うのが「救急科」です。
標準教育に基づく診療はもちろんのこと、【お母さんと赤ちゃんに優しい救命救急センター】をスローガンに、院内各部門と一致団結して、病院総合力でお母さんも赤ちゃんもハッピーになれるように日々挑んでいます。

 

Life-saving Intervention~受入れから初療

要請~受入れ準備

消防庁からの要請は「救命救急センター」で応需します。
搬送途上にある救命救急センターが受入れ可能であれば当院には搬送されないこともありますが、
産婦人科と連携しながら受入れ準備を行います。

初期診療で重要な“安定化(stabilazation)”は救急科が中心となって診療を行っています。

危機的出血の場合には、初療室で気管挿管・人工呼吸を含む全身管理を直ちに実施し、目標指向型輸血療法(GDT; goal-directed transfusion)を基本とし、エビデンスに基づく綿密な管理を実施しています。
心停止が切迫していれば、大動脈遮断バルーン(IABO; intra-aortic balloon occlusion)を用いた蘇生的大動脈遮断(REBOA; resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta)を実施します。必要に応じて、ダメージコントロール戦略(damage control strategy)をとり、安定化するための治療戦略をダメージコントロール蘇生(DCR; Damage Control Resuscitation)とすることもあります。

手術 Operation

手術が必要なときには、産婦人科医が中心となり手術を行い、全身管理は麻酔科医に引き継ぎます。

しかし、極めて重篤で生命危機が継続している場合、救急科も麻酔科と協働して全身管理や、術野で産婦人科と共にダメージコントロール手術(damage control surgery: 多くがガーゼパッキング)を行っています。必要があれば集中治療に移行する際に、開腹管理(OAM; open abdominal management)を実施しています。

画像下治療 Interventional Radiology

画像下治療(IVR)を要するときには、血管造影室内の全身管理を行い、放射線科や産婦人科と意見交換を行いながら経皮的動脈塞栓術(TAE; transcatheter arterial embolization)やバルーン閉塞術(BO; balloon occlusion)の適応を判断しています。

ダメージコントロール戦略の際には、放射線科医にダメージコントロール画像下治療(DCIR; damage control interventional radiology)を依頼することもあります。

母体専門治療から胎児・新生児の救命も目指して

危機的出血以外にも、妊産褥婦の救急疾患(脳卒中、心筋梗塞、大動脈解離など)、産科救急疾患(羊水塞栓症、子癇、HELLP症候群、凝固障害、産褥心筋症など)、診断病名不明な重篤症状(頭痛、胸痛、腹痛、けいれん、意識障害など)の母体を受入れるよう備えています。

母体優先(mom comes first)の原則がありますが、胎児・新生児の管理にも留意し、新生児科と協働しつつ救命救急センター初療室で新生児蘇生が実現できる体制を維持しています。

 

Intensive Care~初療後の集中治療

全身管理を引き続き要する場合、救命救急センターの集中治療室(EICU; emrgency intansive care unit)に入室し救急科が主科となって管理を継続します。
褥婦の場合、助産師や救急認定薬剤師および妊婦授乳婦薬物療法認定薬剤師と連携し、母乳育児にも配慮した母体ケアを実践しています。
人工呼吸器の離脱、抜管を経て、全身状態が安定すれば産科病棟へ移動し産婦人科に治療をシームレスに引き継いでいます(必要に応じて併診します)。

 

Education~母体救命教育

救急科では積極的に母体救命教育を推進しています。
スーパー母体救命症例の臨床経験を積みながら、標準的な教育内容を“教える”技術を身に着けることも重視しています。“Teaching is Learning”とも言われており、身に着けた知識・技術(Technical Skills)を深めつつ定着させ、伝える技術を習得することも救急医として重要な点です。

日本母体救命システム普及協議会J-CIMELSが公認している「母体救命J-MELSベーシックコース」「母体救命J-MELSアドバンスコース」を継続的に開催し、インストラクターの養成も行っています。

 

用語解説

妊産褥婦と母体の違いは?

妊婦とは、妊娠している女性のことです。
産婦は分娩中の女性を指します。分娩は3期に分けられ、第1期は陣痛から子宮口全開大、第2期は子宮口全開大から児娩出、第3期は児娩出後から胎盤娩出までと定義されています。
褥婦とは分娩後から42日後までの産褥期の女性を言います。
これらを全て含めて「妊産褥婦」と呼びますが、「妊産婦」を妊娠から産後1年を経過しない女性を指すこともあり、文脈によって用語の定義が異なる場合もあります。
これら用語の混乱を避けるため、本ホームページでは「母体」を「妊娠から産後1年を経過しない女性」として表現しています。

東京都の周産期関連の搬送システム

母体救命搬送システム

母体の重症疾患に対する東京都の搬送システム。脳卒中や循環器疾患、出血性ショックなどが搬送対象になります。救命救急センターと周産期センターが連携した指定施設(スーパー周産期センター)が最終受入れ施設となり、担当日は原則として必ず受入れます。

搬送元からスーパー周産期センターへの搬送中にも、搬送経路の途上にある救命救急センターに東京消防庁は受入れ要請を継続して行い、受入れ可能施設があれば、その施設へ搬送します。

胎児救急搬送システム

生命に危険のある胎児を救命するために、急速遂娩(胎児の娩出)ができる医療機関に母体を搬送するためのシステム。

常位胎盤早期剝離やその疑いのある場合、早産期に胎児機能不全の徴候がある場合に適応になります。ただし、母体に救命処置を要する場合は、母体救命搬送システムが適応されます。

母体搬送

母体救命と胎児救急を除く母体搬送は、高次施設における母体の管理や胎児の管理が必要な場合に行われます。

J-CIMELS日本母体救命システム普及協議会とは

日本母体救命システム普及協議会J-CIMELSは2015年に設立され、現在は日本産婦人科医会、日本産科婦人科学会、日本周産期・新生児医学会、日本麻酔科学会、日本臨床救急医学会、京都産婦人科救急診療研究会、妊産婦死亡検討評価委員会の設立7団体と、日本看護協会、日本助産師会、日本助産学会の協賛3団体で構成されています。
https://www.j-cimels.jp/

2015年は “多職種協働母体救命時代” の始まりと表現することができるかもしれません。当院の救急科は、J-CIMELSプログラム開発にも積極的に関わっています。

PAGETOP
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.