Japanese Red Cross Medical Center Emergency and Critical Care Medicine Center

救急現場と医療倫理

救急診療と一般診療の違い

一般診療では、事前に受診したい医療機関を選んだり、セカンドオピニオンをもらったりすることができます。

一方、救急搬送は希望の病院ではなく、治療の受けられる最も近い医療機関に搬送されます。

つまり、待機的な医療では当然の「自分で自分の受ける治療を理解し、自分で受けたい医療を選択する」ということが救急現場では困難になります。

また、以下の様なケースでは患者本人から同意を得ることは特に困難であり、本人の希望に沿うことは不可能です。

● 患者自身への病状説明が病状の悪化につながる
● 重症で意識がない
● 子どもで判断能力がない
● 認知症で判断能力がない
● 精神疾患で病気の理解が不十分
● 患者の推定意思を伝えてくれる家族等が同定できない

したがって、救急診療では患者さんの尊厳を守る倫理観が特に重要になります。

救急医の役割 ~ 尊厳の保護

救急医は患者の「尊厳」を守るために、常に高い倫理観を保つ必要があります。社会のセーフティーネットとして機能すべき救命救急センターとしても、「医療倫理」は重要な課題です。

高齢化社会に引き続く“多死社会”に対しても患者さんの尊厳に向き合う必要があります。また、母体救命の場面では、母体の救命と胎児の救命に関連した倫理問題、身体疾患を合併した精神科疾患の場面における倫理問題、臓器提供における倫理問題、災害時の医療における倫理問題など、救急医療では倫理問題に積極的に取り組む必要があります。

日常診療においてはカンファレンスで、救急医のみならず多職種連携を行いながら倫理的妥当性の評価を行っています。

また、広く臨床倫理問題に向き合うべく、バチカン生命アカデミーの若手会員を輩出し、日々奮闘しています。

写真:バチカン生命アカデミー Pontifical Academy for Life 2017年ワークショップ

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