Japanese Red Cross Medical Center Emergency and Critical Care Medicine Center

Safety(詳細編)

災害医療において、安全確保は不可欠です。
自分を危険に晒して活動することは一見かっこいいように思われるでしょうが、
二次災害を引き起こすと、患者が増えるばかりか、
医療を提供する人が減ります。本来助けられるはずの人が何十人も減るかも知れないのです。
絶対にあってはいけません。

某ドクターヘリの人気ドラマでもシーズン3の最終回で活動中にトンネルが再崩落するシーンがありました。
DMAT活動中にああいうことがあると、
「安全管理もできないDMATだから、全国的に一旦活動中止!」なんてことにもなりかねないわけです。
補償は都道府県がすることになりますから、都道府県の立場でいえばもう勘弁、となってもおかしくないですから。

Safetyは「3S」で考えます。すなわち「Self、Scene、Survivor」の順に考えるということです。

「Self」は自分自身であったり、家族であったり、といったところです。
まずは自分の身の安全を確保できていなければ仕事にならないということですね。
そのためにもまずは発災時に自分の身を守って生き残ること!これ以外にはありません。
幸運にも生き残ったら災害医療活動ができるでしょうが、
その際にも適切なPPEを身に着けstandard precautionに気を付けることを忘れてはいけません。

「Scene」は周辺環境の安全確認を怠るなということになります。
危険な現場で医療提供していたら、医療者も傷病者もさらに深刻なケガをするかもしれません。
崩落寸前のトンネル内で医療してて、本当に崩落したら全員下敷きになってしまいます。
活動時の安全管理は消防などに従うことになると思いますが、
ここで強調したいのは、とにかく無理しないことです。
消防や自衛隊などは平時から超人的な訓練をして鍛えている人たちです。
世間一般の人よりも圧倒的な体力と筋力を備えているのです。
それに引き換え、医療者なんてほとんど毎日病院にこもりっきりで、
むしろ運動不足に悩んでるくらいです。かくいう筆者も体重が…。
ということで、彼らの「大丈夫!」はあくまで彼ら基準ですから、
自分基準で大丈夫かをきちんと判断しましょう。

「Self」「Scene」の安全確保ができて初めて「Survivor」つまり生存者に対応できるのだということを
強く肝に銘じておいてほしいということですね。

なお、これを病院に置き換えても成り立ちます。
「Self」は自分を含む職員の安否ということになります。
「Scene」は病院の建物ですね。建物自体が倒壊する恐れはないか?
ライフラインはどうなっているか?例えば停電してたら自家発電に切り替わったか?その燃料は?
水は井戸水?備蓄?医療ガスの備蓄や配管は?医薬品や衛生材料は?手術や透析は可能か?
そういった状況把握が必要になります。
実はこれらはEMISの入力項目になっています。
災害が起こったら、医療機関はすぐにEMISの緊急時入力をしなきゃ!とさえ思っていれば、
必然的にこれらの情報を集めることになります。
「Survivor」はまずは入院患者ということになるでしょう。
患者さんの転倒や転落はないか?点滴スタンドは倒れてないか?大事な管類は抜けてないか?
人工呼吸器の電源は抜けてないか?停電になってもちゃんとバックアップで動いているか?等々、
チェックすべきことはたくさんあると思います。

上記の通り、安全を冒してまで医療を提供しようとすることは、
美談のように思えても実は無責任なことなのです。

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